うつ病の治療法③精神療法(心理的治療)

休養や投薬による治療のほかに、カウンセリングを中心とした心理的療法も効果があるとされているのがうつ病の大きな特徴です。

それ単体ではうつ病は治癒しませんが、補助的な役割として心理的療法は「うつ病のぶり返しを防ぐ」など一定の効果があるとされています。

心理的療法にはどのようなものがあるのでしょうか。

・筋弛緩法

うつ病は身体が緊張状態にあることが多く、それをほぐしてリラックス効果を得るために開発されました。

アメリカの生理学者であるジェイコブソンによって提案された「漸進的リラクゼーション」が草案となっています。

首や肩などの身体の一部に6~7秒ほど極端に負荷をかけ、一気に脱力します。

それを数回繰り返すことにより、身体に「力を抜いた状態」を覚えこませるのです。

筋弛緩法を継続的に行うと、心拍数の安定や手足の冷えの改善、安眠などの効果が得られるとされています。

・支持的精神療法

文字どおり、患者を支持することにより精神の安定を得る心理療法です。

まずは患者の話に耳を傾け、ストレスや悩み、不安などをすべて吐き出してもらいます。

それに対し「それはとても辛かったですね」といった共感の念を与えることにより、自分のつらさを理解してくれる人がいるという安心感を得ることができます。

否定的な態度や意見は厳禁です。

うつ病治療のカウンセリングで最も一般的に行われている方法です。

・認知行動療法

うつ病によって生じた患者の思考・行動を把握・分析し、正しい方向へ導く心理療法です。

うつ病の患者の大半には「自分は何をやってもダメだ」「この先生きていてもいいことなんか絶対にない」「自分は生きている価値がない」といった思考パターンがみられ、一般的に「認知のゆがみ」といわれています。

「なぜそう思うのか」といった理由づけから、例えば「何をやってもダメ」という考えに対し、本当にそうなのか、ダメではなかった出来事はひとつもないのか、過去の小さな成功体験はなかったかと芋づる式に答えを導き出すという方法です。

認知のゆがみに「気づき」を与えることによって、客観的な思考パターンを身に付けることが目的です。

・対人行動療法

主に人間関係が起因とされるストレスによるうつ病の患者に用いられます。

ストレスの元凶となった「人」そのものに焦点を当て、自分が今後どのような行動をとればその人とのストレスを回避することができるかを学びます。

正面から対峙するのではなく「トラブルをかわしてうまくやっていけるような思考、行動パターン」のスキルを身に付ける療法です。

うつ病の治療法②薬による治療

うつ病の治療に使われる薬は主に「抗うつ剤」と呼ばれており、さまざまなものがあります。

うつの程度や副作用などの個人差に合わせて適切な治療効果が得られるように、たくさんの種類の薬が開発されています。

うつ病の薬には、どのようなものがあるのでしょう。

【SSRI】

「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」の総称です。

脳内の神経伝達物質のひとつであるセロトニンの減少によりうつ病は発症しますが、そのセロトニンが減少しないように作用させる効果がある薬を指します。

副作用の少なさと安全性の高さが長所で、一般的なうつ病の治療に多く使われています。

・ルボックス、デプロメール

不安を取り除く効果があるため、強迫性障害にも用いられます。

SSRIの中でも早くに開発されたため、飲み合わせや服用回数の注意が必要です。

・パキシル

SSRIの中でも最も有名な薬です。

即効性が高く、重度のうつ病に処方される薬です。

効果が高い分、副作用の多さや断薬しづらいなどのデメリットがあります。

・ジェイゾロフト

SSRIの中でいちばん安全性が高く、比較的穏やかな効果が期待されるため、心療内科で多く処方されています。

水なしで服薬できるタイプ(口腔内で溶ける)もあります。

【SNRI】

「セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬」の総称です。

SSRIはセロトニンだけに作用する薬ですが、SNRIはノルアドレナリンにも作用します。

ノルアドレナリンは無気力な状態や意欲をつかさどる神経伝達物質のため、気分の落ち込みけでなく「やる気」や「意欲」の部分にも効果が期待されます。

SSRIより後に開発されたため、日本で処方可能なSNRIは3種類だけです。

・トレドミン

日本で最初に発売されたSNRIです。

ノルアドレナリンに効果が高いとされてきましたが、うつ病への効果は弱く現在ではあまり処方されていません。

痛みを抑える効果があるため、腰痛など痛みを伴う疾患に処方されています。

・サインバルタ

効果が高く、現在最も多く処方されているSNRIです。

カプセル状のため量を調節できないところがデメリットです。

【NaSSA】

「ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬」の総称で、2009年に初めて販売されました。

SSRIとSNRIは脳内の神経伝達物質を減少させないようにする作用がありますが、NaSSAはセロトニン・ノルアドレナリンともに分泌を促す薬です。

分泌が促されることによりもうひとつの神経伝達物質であるドーパミンという快楽をつかさどる神経伝達物質にも間接的に作用し、気分が向上するといわれています。

うつ病の治療法①十分な休養

うつ病の治療方法は薬だけではありません。

軽いうつの場合は投薬だけで仕事や生活を送ることができますが、中程度以上のうつ病であれば、十分な休養をとることが改善のいちばんの近道です。

休養といっても、夏休みのように短期間で治るものではありません。

どのように、休養をとることが効果的なのでしょうか。

・休職する

正社員として働いている場合、会社の制度で休職を認めているところがあります。

医師が休職の必要があると判断すれば、診断書を提出することにより休職が認められます。

休職期間は、就業規則に定められていますが、長いところでは数年単位で休職を認めているところがあります。

給与は支払われませんが、健康保険から「傷病手当」として支払われ休職中の収入が保証されます。

また、最近ではこういったサポートする企業も増えてきています。

※参考までに→広がる「うつ社員サポート」 100%の復帰も 〈AERA〉|dot.ドット 朝日新聞出版

・休学する

学生(とくに大学生)の場合は休学制度を利用することができます。

休学期間は半年・1年などと定められており、その分在学年数が繰り下がるため、4年制大学の場合は4年で卒業することはできません。

なお、休学期間の学費は学校により免除される場合と支払わなければならない場合があるので注意しましょう。

・入院する

うつ病は周りの環境が大きく関わってくる病気です。

とくに女性の場合、自宅療養を選んでも日々の家事や子育てなどに追われることは変わりません。

また、同居している家族がいる場合、休養への理解を得られないと「怠けている」と勘違いされたり心ない言葉をかけられてしまったら余計にうつ病が悪化してしまいます。

静かな環境でリセットするためにも、思い切って入院をするということもひとつの選択です。

・自宅療養

ある程度の蓄えがあれば、仕事を退職し自宅療養をするという方法もあります。

復職や復学の制約がないため、ゆっくり過ごすことができるでしょう。

デメリットは、生活リズムが乱れやすくなるためコントロールを要することと、収入源がないため蓄えが尽きたら継続できないことです。

休養中は、なるべく安静に過ごすことが必要です。

重度のうつ病の場合はなるべく身体を休めることを重点において、休んでいることに罪悪感を感じないようにすることです。

その間の生活のリズムは一定に保つようにしましょう。

決まった時間に起床し就寝することと、一日三食を決まった時間にきちんと摂ることです。

眠れなかったり食べられない場合は無理をする必要はありません。

少しずつ、できることから始めていきましょう。

少し動けるようになったら、散歩や読書など好きなことから取り組んでいきましょう。

ゆっくりと通常の生活に戻していくつもりで休養することが大切です。

うつ病の兆候~からだの症状~③

うつ病と食欲に密接な関係があることは前項で説明しましたが、その中でもいちばん多いとされる拒食をともなう摂食障害についてより深く考えていきましょう。

「摂食障害」と聞いて、皆さんは何を連想するでしょう?食事を受け付けないでやせ細っていく、激ヤセ、というイメージが多いのではないでしょうか。

また、その姿を見て「痩せていてうらやましい」「自分も摂食障害になればダイエットできるかも」とさえ思う人もいるようです。

ですが、摂食障害というのは一度その状態に陥ってしまうと完全に克服することが大変難しい、健康な人にははかり知れない苦しみを伴う病なのです。

いきなり拒食症になる人はまずいません。

そのほとんどの原因が過剰な食事制限のダイエットを続けたことにあります。

体型にコンプレックスを抱える人だけでなく、最近では体重管理を厳しくコントロールする必要のあるスポーツ選手や芸能人が摂食障害を発症しやすいといわれており、実際公表している人もいます。

過食症の症状は「食べられない」だけではありません。

食べてしまったことによる罪悪感で自ら指を口に入れて嘔吐する行為や、「吐いてしまえば元に戻る」という思い込みで食欲の赴くまま食べ続けたあとに吐く行為(過食嘔吐)、口に含んで咀嚼したものを吐き出す行為(チューイング)も症状のひとつです。

当然ですが、身体の負担はとても大きいです。

嘔吐をすることにより、唾液腺が常に腫れた状態になり顔の形が変わります。

また、吐しゃ物には強い酸性の胃液が混じっており、嘔吐を繰り返すことによって徐々に歯が溶けてゆきます。

内臓の負荷もかかるため、健康な人より消化器の老化が早まるリスクもあります。

結局は身体に食べ物が行き渡っていないため、最終的には栄養失調の状態になります。

ここまでの状態になってしまうと、命の危険があるため入院し、点滴で栄養を補いながら治療をするほかにありません。

うつ病と摂食障害は一見別の病気に思われますが、やはり密接に関わっているといってよいでしょう。

摂食障害を患う人はうつ病も併発していることも多く、逆にうつ病が引き金となって摂食障害を併発するケースもあります。

「食べることが怖い」「太るのが怖い」という不安がうつ病によって煽られてしまうこともあります。

改善するためには、やはりうつ病の適切な治療を受けることにより不安や恐怖を軽減し、心理的療法により自分を縛り付けている食や体型への強いこだわりや思い込みを少しづつ開放することです。

うつ病の兆候~からだの症状~②

うつ病と人間の三大欲求は密接に結びついています。

性欲の減退や不眠ももちろんですが、いちばん強い影響を与えるのは食欲です。

一般的に「摂食障害」と呼ばれており、うつ病と併発することの多い症状です。

改善するのに長い時間がかかり、摂食障害を完全にコントロールすることは最も難しいとされています。

摂食障害とは、どのような状態を指すのでしょう。

・拒食症

その名の通り、食べることを拒んでしまう状態です。

うつ病に罹患すると、食欲が減退するため相対的に食べる量が減り体重も減ります。

また、味覚が鈍麻するため「砂を噛んでいるよう」だとも表現されています。

ただし、うつ病の範囲を超えて「食べることが怖い」「身体が食べ物を受け付けない」状態になると摂食障害の領域です。

うつ病と並行した治療が必要となります(詳細は次項に著述)。

・過食症

ストレスを感じると「やけ食い」のように食べることによって解消しようとする人がいます。

その範疇を超えて、過度に食べ過ぎてしまうことが長く続き、体重が急激に増える症状が「過食症」といえるでしょう。

「食べることをやめられない」「罪悪感を感じることによって更にそれを忘れるように食べてしまう」ことが特徴です。

とくに甘いものや炭水化物の欲求が強く、菓子パンやスナック菓子を大量に間食するケースが多いです。

過食症もまた、原因は複数あるといわれています。

炭水化物を過剰に欲するのは、脳内の神経伝達物質を補うためとされています。

炭水化物は過剰に摂取すると、神経伝達物質が増加するといわれており抑うつ状態が一時的に解消されるといわれています。

ですが、うつの状態が重いと食欲がなくなるため、回復途上でエネルギーを欲する時期に過食の症状が現れるといえます。

また、うつ病の治療の過程で服用している薬の副作用も因果関係として指摘されています。

抗うつ剤であるデプロメールやルボックス、双極性障害で主に処方されるデパケンには食欲を増進させる効果があるとされています。

食欲が出ないうつ病の場合には適切な投薬といえますが、過食が生じてしまうこともあるということです。

もちろん個人差があるので、過食で困っている場合は医師に相談し適切な薬を処方してもらいましょう。

過食を抑えるには、カロリーの低いおやつを食べる、甘いものがほしくなったらお菓子から果物へ切り替えるなど工夫も必要です。

我慢し過ぎは余計に過食を引き起こすことになりかねません。

自分を責めることなく「たまには食べてもいいんだ」という気持ちでうまく付き合っていきましょう。