利用者の自宅に訪問して介護サービスを提供する訪問介護では、施設でサービスを提供する入所型や通所型とはまた違った問題が発生することも多い。とくに厄介なのが業務範囲外の仕事を頼まれたときだ。
例えば利用者本人だけでなく、その家族のケアもしてほしいと頼まれたり、家の掃除や買い物を頼まれたり、さらにはよりプライベートな領域に踏み込んだことを頼まれることもある。訪問介護先で、セクハラまがいの行為を受ける女性スタッフの問題なども浮上している。
利用者やその家族にしてみると、自宅でサービスを受けている気安さからついつい範囲外のことを頼みたくなる、あるいは向こうがこちらのプライベートの領域に踏み込んでいるのだからこちらも少々踏み込んでもいいだろうといった意識が働くのだろう。こうした厄介な状況の対処法としては、規則を伝えて「できない」とはっきり伝えるのが一番だ。自分が個人的に「そんなことはできない」と拒否した印象を与えるのではなく、あくまで業務範囲内のサービスしか提供できないことになっていることを理由に断るのがコツだ。
本来訪問介護は介護保険の範囲内のサービスを提供するものなのだから、それを逸脱する業務は行うことはできない。国民の保険料や税金によって成り立っているサービスなのだから、業務範囲内のことをしてしまうと不公平になってしまうわけだ。こうした訪問介護の大原則をよく説明したうえでできないことをはっきりと伝える、そのうえで可能ならば対案を提供するようにすれば角が立てずに対処することができるだろう。